「不妊ルーム」では、毎日いろいろな方々の相談を受けています。そうした中でも、医療費が高額な体外受精に関する相談は、深刻さがあります。一方、人工授精を受けている女性の相談には、ある種の憂鬱さがあります。
それは人工授精1回当たりの妊娠率が5%~8%と、とても低いことに起因していると思うのです。「不妊ルーム」では、これまでに人工授精を、20回~30回経験したという方の相談も、ときどき受けます。
人工授精を何回も受けたことがある方なら、おわかりになると思いますが、最初の2,3回は、「妊娠できるのではないか?」 と期待します。しかしこれが5,6回ともなると、気持ちが惰性的になってしまうのです。そして人工授精が、10回を越えたあたりからは、「妊娠なんてかすりもしない」「妊娠は別世界のこと」と、思えてくるとおっしゃいます。
不妊治療医の中には、「人工授精で妊娠する人は3回までに妊娠する」とか、「人工授精で妊娠する人は、タイミング法でも妊娠できる」という言い方をする医師もいます。
人工授精を何回も経験した方の相談や、不妊治療の医師の意見などを聞いているうちに、私は人工授精をスルーする=” ジャンプアップ ”ということもありだと、考えるようになったのです。
不妊治療は、人工授精から健康保険適用外の自由診療となります。自由診療は、医師の裁量権が大きくなりますが、そうであれば、患者サイドの意志も、より大きく反映されていいと思うのです。その意味からも、患者ではなく、 ”消費者 ”という自覚を持つことがとても大切だと思うのです。
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妊娠という結果がでないからといって、不妊治療の医療機関を次々と巡り歩くことを、買い物にたとえて「ドクターショッピング」といいます。こうしたことを繰り返している人は、本人の希望とは裏腹に、妊娠から遠ざかってしまう場合が多いようです。
しかし、あなた方カップルが、体外受精、顕微授精などの高度生殖医療が視野に入っているなら、「ドクターショッピング」ではなく、”説明会ショッピング ”を勧めたいと思います。体外受精は一回あたり40万~60万円の医療費がかかるわけですから、慎重に見極めるのは当然のことです。しかし、ホームページは、どの医療機関も、あたかも自分達のクリニックが優秀だという風な作り方になっていますから、あまり当てになりません。
体外受精を行う医療機関では、説明会を開いているところが多いようですが、これには、公開非公開があります。非公開は自分の医療機関に通院している患者さんのみを対象とした説明会です。一方で通院している方々も含め、一般に公開している説明会もあります。こうした説明会は、自らの医療に自信を持っていることの現れかもしれません。
体外受精説明会に参加した方の話を聞いていると、その内容には、雲泥の差があるように思います。医師がスライドを使って2~3時間かけて解説する医療機関の説明会がある一方で、最初にビデオを流し、そのあと看護師さんが治療スケジュールを棒読みし、最後に医師が質疑応答に応じるだけという説明会(?)もあります。
体外受精は、妊娠率が22~23%なのですから、自分達が納得した医療機関で受けるようにしたいものです。「不妊ルーム」では、こうしたニーズに応えるべく、IVFカウンセリングを始めたのです。
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4月の人気記事を3つ

「不妊ルーム」では、体外受精を受けようと決めたカップルは、「自然周期」「低刺激周期」で採卵する医療機関に紹介することが多くなってきました。そして、そうした医療機関で実際に体外受精を経験された方の話を聞いていると、 “体外受精は金魚すくい” なのではないか? そんな風に思えてきます。
体外受精が普及してからは、ロング法、ショート法での採卵が一般的でした。こうした刺激法では、毎日医療機関に通院して注射をし、両方の卵巣に数多くの卵を育てて、特定の日に一斉に採卵し、受精した卵のうち、良好な受精卵(胚)を戻すといったやり方です。こうした方法は、現在でも主流だと思います。
しかし、体外受精は、医師や培養士の技術が優秀であれば、ロング法、ショート法は、必要ないと主張する不妊治療医もいます。自然周期であれば一切薬を使用しないわけですから、まず通院回数がグッと減ります。
排卵前に、ねらいをつけた卵にスッと近づいていって、その一個を上手にすくいとってきて、受精させ、そしてそっと子宮の中に受精卵を戻す。本当に上手な体外授精-胚移植は、それだけのことなのです。まさに金魚すくい名人が、ねらった金魚にスッと近づいて、モナカですくい、お椀の中に金魚を入れることに似ていると思えるのです。確かに投網を使って、数多くの金魚を捕るという方法もありますが、これでは網の中の金魚を痛めてしまうでしょう。
現在、不妊治療、とりわけ体外受精にトライしている女性の多くは仕事を持っていて、「そうたびたびは通院できない」という声をよく耳にします。こうした背景があり、自然周期、低刺激周期採卵が増えているのだと思います。詳しくは、私の著書『妊娠カウンセリング』もご参考にしてください。
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4月の人気記事を3つ

Hさん(38歳)が、「不妊ルーム」でこの度、3度目の妊娠をされました。第1子を、”こまクリベイビー”として授かった人が、第2子も妊娠するということは珍しくありません。しかし、3人目というのは、彼女が初めてだと思います。3回妊娠に至ったことより、彼女が「不妊ルーム」に訪れるまでのほうが印象的なのです。
彼女は2005年から不妊治療を開始し、人工授精を10回行うも、妊娠に至りませんでした。そして、体外受精に2回挑戦するも、やはり妊娠には至りませんでした。そして、ロング法という強い刺激法で、排卵誘発を行ったため、2回目の採卵の際には、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしてしまい、大学病院に緊急入院になりました。
そして、2007年の10月に、憔悴しきって「不妊ルーム」を訪れたのです。彼女には、「もう一度体外受精に挑戦したい」という意志がありました。しかし、私はそれにはストップをかけました。何よりも心身ともに、リカバリーすることが大切だと思ったのです。
それで、漢方薬を投与しながら様子を見ていたのですが、通院から半年ほどして、クロミッドを加えた周期に、1度目の妊娠が成立しました。そして、2年前の2月に、第2子を希望ということで、「不妊ルーム」に再訪されたのですが、最初の妊娠した時と同じ漢方薬を処方したところ、翌月には2回目の妊娠となりました。そして、今年の3月に、第3子希望ということで、また「不妊ルーム」にお見えになったのです。今回は、最初の妊娠と同じ、クロミッド+漢方薬で妊娠となりました。
彼女に3度目の妊娠を告げると、「先生、漢方薬って本当に効きますね。」という一言がとても印象的でした。彼女のこれまでを振り返れば、その言葉には十分納得するものがあります。「不妊ルーム」の妊娠には、漢方薬がなくてはならないものなのです。
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4月の人気記事を3つ

【私の本『ちいさな命のバトン』
から、リメイク版で、、、】
堂本優子さん(仮名)という女性は、バリバリ仕事ができるキャリアウーマンなのだと思う。私の勝手な想像ではあるが、、、。
彼女が「不妊ルーム」に相談に訪れた時、何よりも驚いたのは、診察前の問診票である。それは、彼女が結婚して今日に至るまでの不妊治療歴、そして現在に至る心境があまりにも理路整然とつづられていたのである。お役所に提出する書類のように、全くと言っていいほどすきのないその文章は、これから対面する私の方が気後れしてしまうほど、、、。
初対面の彼女は、スーツをびしっときめて、私が投げる質問に対しても、「立て板に水」のような答えが返ってきた。こうした女性によくあることだが、妊娠ということまでも、理屈でとらえてしまい、そしてそのことが、かえって妊娠を遠ざけてしまいがちなのである。妊娠は理屈でできるものではないからである。
私は検査などを行う前に、彼女に「ちょっと肩の力を抜いてみたらいかがですか」とアドバイスしてみた。彼女は「わかりました」と一言だけ答えた。それから順次検査を進めるはずだったのであるが、その途中で彼女に妊娠反応が出たのある。
私はその事実を彼女に伝えると、なんと、彼女の目からハラハラと涙があふれ出したのである。それは、今まで身にまとっていた鎧甲を、突然脱ぎ捨てたようであり、私はとても驚いた。そして、「この私が妊娠ですか」と言ったきり、言葉が続かなかった。
しばらく時間が流れ、落ち着いた頃を見計らって、「不妊ルーム」ではお腹の上から赤ちゃんの入っている袋、すなわち胎嚢確認ができること、そしてそれは、一週間後くらい先になり、予約が必要なことなどを告げた。
そして、私は適当と思われる日時を提案するも、すぐに撤回して、「この日は平日ですから、お仕事があるでしょう。土日の方がいいですね」と尋ねると、「いいえ、かまいません。その日に予約を入れて下さい。私はこれまで、会社に十分すぎるくらい尽くしてきたつもりです。その日は有休を取らせてもらいます」ときっぱりと答えた。
そして、一週間後に胎嚢確認をおこない、その写真を彼女に手渡すと、まるで子どものような笑顔を浮かべた。そして、こう言い残し、クリニックを後にした。
「先生のところで私は、命のリレーのバトンを渡されました。いま私はとても幸せを感じています。これからの長い人生、お腹の中にいる大切な”命のバトン”と一緒に生きていきます」
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