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体外受精と医師の良心

体外受精は、妊娠率が25%に満たない、そして赤ちゃんを抱いて帰れる生産率に至っては、20%にも満たない医療です。乱暴な言い方をすれば、「失敗して当たり前の医療」とも言えるわけです。そして、この妊娠率の低さということに、色々な問題の根本があるように思います。

体外受精1回あたりの料金は、20万円~120万円までとバラバラですし、排卵誘発の方法、そして、医療技術なども本当に大きな差があります。自由診療は保険適用下の診療に比べ、医師の裁量権は大きいのですが、この妊娠率の低さが、その幅をより一層大きくしているようにも思えます。

これまでの体外受精に関する相談でも、10回以上くり返して、数百万円も使ったという相談も何回も受けて参りました。また、採卵して移植に至らなかったのに、40万円以上請求されたという相談を受けることもあります。こうした中にあって、最近医師の良心を見る経験をしました。

「不妊ルーム」でのIVFカウンセリングを受け、体外受精を決断されたカップルに、私が信頼できる医療機関への紹介状を書きました。そこは女性の身体に負担をかけない自然周期採卵を中心とした医療機関でした。彼女はそこに出向き、採卵にトライしましたが、卵胞の中は空っぽで、結局採卵ができなかったそうです。

私は彼女に、「採卵できなかったそうですが、医療費はいくらかかりましたか?」と質問しました。するとその答えは、「無料でした」だったのです。私はビックリしてしまいました。

採卵は体外受精における、もっとも外科的なプロセスであり、医療機関によっては、全身麻酔でおこなうところさえあります。採卵針という高額な針も使いますから、医療費は当然発生するわけですが、いっさいお金を取らなかったというのです。私は、ここまで誠実な医師の対応は、これまで聞いたことがありませんでした。彼女は今後も間違いなく、その医療機関でがんばるのだろうと思います。

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