
「妊娠力をつける」プロローグより
「自由診療なんだ。嫌ならよそへ行けばいいんだ」
私がかつて不妊という問題に対して患者側に立たされたとき、産婦人科の院長が私に向かって言い放った言葉です。今日に至るまで、いくどとなく脳裏によみがえってくるリフレーンでもあります。
その後私は、内科の診療所を開設し、その一隅に「不妊ルーム」を設けました。そして、内科医という立場で不妊と関わることになっていきました。私が不妊に悩む方々の相談を始め、フォローアップを行なうようになって6年の歳月が流れました。そうした「不妊ルーム」の日々を本書でお話ししたいと思います。私は今日に至るまで、自由診療の対極としての保険診療ということにこだわってきました。健康保険のきく保険診療というフレームの中で、妊娠に向かってアプローチしようとしたとき、いったいなにが行なえるのか、それが私の今日までのテーマです。そして有効なツールとなっているのが、基礎体温表であり、漢方薬なのです。これまでに私のもとに不妊相談に来られた方も3000名を超え、その半数近い方を私はフォローアップしてきました。幸いにも700名を超える方が妊娠に至りました。「不妊ルーム」でのさまざまな出来事には、「妊娠へのヒント」が数多くあると、日々感じています。
「不妊ルーム」の経験は、私の思索を深めていったようにも思います。今日医療の分野では、EBM(Evidence-Based Medicine:科学的根拠に基づく医療)が、提唱されています。科学的根拠に基づいて医療を実践しようということは極めて当然なことであり、通常の診療においては、なんら違和感はないのです。しかし、これが不妊という問題になると、EBMというものさしが、いかに間尺に合わないか、実態に即していないか、脆弱なものであるか、本書ではこのことをわかりやすく述べてみたいと思います。

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(放生 勲 (著) ,主婦と生活社,税込756円)




